« 2008年3月 | トップページ | 2008年5月 »

2008年4月

4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて

四月のある晴れた朝、電車通りでぼくは

100パーセントの女の子とすれ違う。

たいして奇麗な女の子ではない。

しかし、五十メートルも先から僕にはちゃんと分かっていた。

彼女は僕にとっての100パーセントの女の子なのだ。

彼女は北から南へ、僕は南から北に向けて歩いていた。

とても気持ちの良い四月の朝だ。

少しでもいいから話をしたい。

でもいったいどんな風に話かければいいのだろう?

何歩か歩いて振り返った時、彼女の姿は遠ざかっていた。

そんなもやもやとした四月の朝、

100パーセントの外人さんが道に迷っていた。

今度はしっかりと話しかけられる。

英語は得意じゃないけれど、

困っている人を見捨てることは出来ない。

その外人さんに話しかけられているおじさんも困っている。

僕は辿々しい英語で道案内をする。

おじさんに感謝される。

100パーセントの外人さんにも感謝される。

空は青く、完璧に澄み渡る。

空だって100パーセントだ。

A Perfect Sky.

100パーセントの日だ。


今なら彼女になんと話しかけていいかはっきりと分かる。

とにかくその科白は、「I lost my way.」で始まり、

「悲しい話だと思いませんか」で終わる。


僕は彼女にそんな風に切り出してみるべきであったのだ。








村上春樹「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」

| | コメント (0)

« 2008年3月 | トップページ | 2008年5月 »